2006年11月24日金曜日

「日本の食の基本は、カレーライスとトンカツ、それと煮物」(吉本隆明)



政府が「食育白書」なんてもの を発表した(ここ)。あんなもんを読むより、吉本隆明を読む方がいい。この断定が 正しいかどうかの問題ではない。「食いもんへのこだわり」はいかにグロテスクで悲しいものかがよくわかる。

この本:
吉本隆明「食」を語る
吉本隆明「食」を語る吉 本 隆明 宇田川 悟


Amazonで詳しく見る
 by G-Tools

吉本隆明の食べ盛り時代は戦時中だったので、一番悲惨な戦後の食料難時代 にはもう大人だった。だから子どもの時代は案外いいものを食って育った。それでも、充分には食べられなかったようで、飢餓恐怖症から白米偏重の伝統食の悪 弊に染まったため、ながらく糖尿病。かれのいう「伝統食」の奴隷となったことが、病気につながった。心したいことである。

でも、いいことも言っている。懐石料理と高級レストランのフランス料理は 「得体が知れない」と。これは同意。あれは拘り過ぎだ。

つくづく、料理の味の好みとは個人的なものであると思う。吉本は「東京の 料理の味付けは淡白にすぎる」と断じる。九州出身のお母さんの味が一番とのことだが、関西人にとっては驚きの断定。しかし、これこそ料理の優劣の真実を物 語っている。好みとは所詮慣れ親しんだ味であるかどうかだけ。食材とか料理の味付けには、「能書き」はあっても、優劣はないのである。

「食」に拘るのは、卑しくって、格好が悪い。日本政府自らそんな格好の悪 いことを始めてしまった。特定の食習慣を「伝統的で優秀である」と断じる傲慢さだけは、持ちたくないものである。

「食」はともかく、この本には、社会論的、文学論的、政治論的に、数多く の「目からウロコ」がある。30ぐらいあるか。一読おすすめ。

Posted: Fri - November 24, 2006 at 09:09 PM   Letter from Yochomachi   名言(迷言)集   Previous   Next   Comments

0 件のコメント: